雪道 官軍も踏みしめた
但馬往来(鳥取県岩美町)


因幡(鳥取県東部)から但馬(兵庫県北部)へ抜ける山陰道の但馬往来。県境付近は、日本海沿岸の道と、山あいを通って蒲生峠(標高356b)を越える道があった。

 本道とされた蒲生峠越えの道をたどった。出発地点は峠の北西約6`の岩井温泉(岩美町)。湯村、岩井宿などと呼ばれた古くからの温泉地だ。
山陰道はこの温泉街を 通っていた。今も3軒の旅館が営業している。

温泉街を出て蒲生川沿いをさかのばった。道案内を頼んだ「いわみガイドクラブ」代表の油浅郁夫さん(65)に沿道の岩井廃寺塔跡に連 れていってもらった。最大幅3.64bの楕円形の岩「鬼の碗」がある。

白鳳文化(7世紀後半〜8世紀初め)が花開いたころにあった三重塔の礎石で、中央の直径77.5aの穴に心柱が立て られていたという。「塔の高さは推定31b。但馬から山を越えてきた人は目に入った塔にきっと驚いたことでしょう」。

 岩美町塩谷地区を過ぎ、山陰道に。廃れつつあったが、文化庁の「歴史の道百選」に選ぱれ、町が1998年から3年をかけ、峠までの約3`を整備した。埋もれていた石畳も発掘された。

 道は雪に覆われていた。1868(明治元)年、諸藩の恭順の意思を確かめるため、山陰道鎮撫(ちんぶ)使・西園寺公望が京都から官軍を率いて因幡に入った時期もこの季節だったという。 「彼らもこの雪を踏みしめて峠越えをしたはずです」

(朝日新聞から  2017.3.17 )
 

延命地蔵が立つ蒲生峠
かっては奥の台座の上に初代の地蔵があったが、1963年ごろに盗難にあったという

三重塔の礎石
 
 
 
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