竜神洞ロマンを秘め
浦富海岸の地質はい大きく分けて淡い紅色の明るい花崗岩と、
その上に重なる濃緑色で大小の岩塊を含んだ火山砕屑岩(凝灰角磯岩)で構成されています。 花岡岩には、北東方向に50〜60度も傾斜
した節理(割れ目)が入っています。浦富海岸の千貫松島の洞門はこの節理に沿って浸食された結果できたものです。
火山砕屑岩は羽尾岬や兵庫県境の岬に見られ、これらの一帯には多くの岩脈が貫入しています。羽尾岬先端の竜神洞は貫入した岩脈
が崩落した結果できた洞窟で、垂直方向に8bの幅で開いています。奥行きは1500bもあります。これらの地形は地質構造を反
映して形成されたもので、観察するには遊覧船で海から見るのが最適です。
竜神洞については、洞門の奥に大きな竜神が住んでいて、つむじ風に乗って昇天するという民話が残っています。そんなロマンを秘
めた洞門を探検してみるのも一興です。(管理者から :自然歩道の龍神洞までの区間で地滑りの影響により通行止めになっている)
最後にもう一つ浦富海岸の民話を紹介します。浦富海水浴場の西側の石段を登ったところに荒砂神社があります。昔、漁師が網にか
かった魚を外している最中、腹のふくらんだ鯛を見つけ、中を開くと金色に輝く神像が出てきました。村人は岩の上に社を建てて安
置しました。鯛は神の使者として神聖な魚とされ、荒砂神社の氏子は長い間、鯛を食べてこなかったといいます。
羽尾岬の先端に二つの洞窟(どうくつ)があります。海に面した洞窟は龍神洞(りゅうじんどう)と呼ばれ、
幅8m、高さ10m、奥行き150mで山陰海岸でも最大級の海食洞(かいしょくどう)です。
崖の中腹に口をあける丘龍神(おかりゅうじん)は内部で海龍神(うみりゅうじん)とつながり、
ゴーと波の音が響いています。昭和2年に作家・島崎藤村は小舟で海龍神の中へ入り、夏でも冷たい空気や底知れぬ水の色に驚嘆しました。
(朝日新聞から 元鳥取砂丘保安官事務所長 田中寅夫 元鳥取地学会会長 山名巌) |