日本仏教史

  1. 大和時代(仏教の伝来と定着)
    仏教の伝来は538年、百済の聖明王が朝廷に釈迦像と経典を献上したときとされる。
    実質的には主に朝鮮半島・百済からの渡来人・帰化人が仏教を伝えた。
    伝えられた仏教は政治勢力に利用されながら、権力者に支持・保護されて徐々に広まった。

    聖徳太子と蘇我氏は仏教を支持し、当時の都(飛鳥、斑鳩)を中心に繁栄した。また、 聖徳太子は中国に仏教の習得のため遣隋使を派遣した。

    聖徳太子から奈良時代の各天皇まで一貫した意図により、仏教を奨励し、仏教による国家鎮護。仏教をこの目的のために国家機能の一部として取り込んだ。
    公費で寺を造営・管理し(官寺)、僧侶は官僚としての身分を与えられ(官僧)、僧侶や寺を管理する法律を作った。
    したがって、僧侶の役割は、国家の安泰を祈祷することが第一の目的。

  2. 奈良時代 仏教は国家鎮護を目的
    聖武天皇は、各地に国分寺を建立、奈良には大仏を建立。遣唐使がさかんに派遣された。
    奈良の都に大寺院が次々に建立されたが、民衆とはかけ離れた存在で、寺院は寺というよりも大学の研究室に近いもの。

  3. 平安時代 山岳密教  仏教宗派成立
    仏教界に2人の天才が現れる=最澄と空海。
    都から離れた山岳に寺院を作る(国家とは一定の距離を置くため)。
    △ 天台宗〜伝教大師最澄(767-822)  804〜805年、遣唐使と共に渡唐 し、天台教学、真言密教、禅法、戒律(この4つを四宗相承という)を学んで帰国。
    806年、比叡山延暦寺で日本天台宗を開祖。

    △ 真言宗〜 弘法大師空海(774-835)    804〜806年 唐に留学して、密教を専門に勉強、修行して帰国。809年、高雄山寺で真言密教を布教。816年、高野山に金剛峰寺を開き、真言宗を開祖。

    △ その他 日本では1052年より、末法の時代に入ると考えられていた(末法思想)。このような風潮の中、阿弥陀仏の西方極楽浄土への往生を目指す信仰(浄土教)が 人々の間で大流行した。源信(恵心僧都)(942-1017)は、このような中で「往生要集」を著し日本念仏思想の基礎を築き、浄土教の始祖。
    平安時代も寺と僧は国家お抱えの地位にあった。だが、平安時代には官僧に対して、勝手に出家して僧侶を名乗る「私度僧」が現れ、庶民の さまざまな願いに応えて活動する者があった。空也(903-972)の民間布教はそのひとつであった。彼は庶民に阿弥陀信仰を勧め、 「市聖」と呼ばれた。

  4. 鎌倉時代 華開く新仏教ー有力な6宗派の誕生。日本史上、仏教が最も繁栄した時代。
    時代の流れー貴族の政権から武士の政権へと移り変わる。政治・経済・社会の変化・発展とそれに伴う新しい時代の気運。仏教もそれに連動。
    「官僧」の俗化。官僧は公務員であるから、服務規定により個人の救済はできず、国家の仕事・行事に専念せざるを得なかった。
    鎌倉新仏教はの担い手は「│遁世僧」(官僧を辞して「私度僧」になることを「遁世(僧)」という)。
    すべての人々の救済を目的として活動する民間布教であつた。
    鎌倉新仏教は、国家お抱えの仏教から個人の人々の救済を目的とする大衆仏教へと移り変わっていった。

    1. 阿弥陀信仰、他力本願グループ(浄土系)
      末法思想、源信の浄土教の流れから誕生した「法然の浄土宗」、「親鸞の浄土真宗」、「一遍の時宗」

      ●法然(1133-1212)
      阿弥陀仏のみを信じて「南無阿弥陀仏」と唱えることにより、貴賎上下や男女の区別なく西方極楽浄土へ往生することができる、と説いた。

      ●親鸞(1173-1262)
      阿弥陀仏の願力によって、信心のみで、いかなる者も救われる、と説いた。 戒律は軽視し、妻帯した。

      ●一遍(1239-1289)
      阿弥陀仏の本願を信じようが信じまいが「南無阿弥陀仏」と唱えるならば極楽往生できる、と説いた。「踊念仏」が有名。

    2. 釈迦信仰、菩提心重視グループ
      ・日本に初めて伝えられた禅宗「栄西の臨済宗」と「道元の曹洞宗」
      ・法華経を根本とする「日蓮の日蓮宗」
      ・旧仏教側の改革者として「法相宗(興福寺)の貞慶」、「華厳宗(東大寺)の明恵高弁」、「(新義)律宗の叡尊、忍性」など

      ●栄西(1141-1215))
      臨済禅は、看話禅という師弟の問答による修行禅。

      ●道元(1200-1253)
      曹洞禅は、「只管打坐」による「即身是仏」を説く。

      ●日蓮(1222-1282)
      釈迦仏に帰依し、「南無妙法蓮華経」を唱えて善行を積むことが救いになる、と説いた。

  5. 室町時代
    幕府は臨済宗と新義律宗を保護。特に臨済宗は室町幕府の「官僧」化、全国的に貴族・武士に広まった。
    京都の金閣寺・銀閣寺は臨済宗の寺、当時の繁栄ぶりを象徴。

  6. 江戸時代
    キリシタン禁制→ 寺院諸法度と寺請(檀家)制度→檀家は寺院・僧侶にかかる費用を負担、寺は檀家の戸籍を管理する任務を担う。 他宗派の檀家への布教や新たな寺の建立が禁止→僧侶は、信者を獲得する努力は不要、生活は保障される。が、布教の余地はない。 この制度が、現在の葬式と法事を主な仕事とする葬式仏教の起源となる。
 
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