鳥取地名の由来(その10)

前回に続き、全国に存在する(した)「鳥取」を紹介します。今回は、西日本編です。

<京都府>
京丹後市弥栄(やさか)町に、「鳥取」という地名が現在も残っています。 藤原宮跡出土木簡に「旦波国竹野評鳥取里大贄布奈」とあり、これは古代の史料で裏付けられる最古の「鳥取」です。藤原京といえば694年に 飛鳥京から遷都され710年に平城京へ遷都されていますから、この「鳥取」は正真正銘1300年の歴史を誇る地名と言えます。 その後、平安時代の『和名類聚抄』に現れる「丹後国竹野郡鳥取」、室町・戦国時代の「鳥取庄」、近世の「鳥取村」、そして「弥栄町鳥取」か ら今の「京丹後市弥栄町鳥取」へと続きます。

<大阪府>
大阪府には、「鳥取」という地名の系統は2つあります。 阪南市内には、「鳥取」、「和泉鳥取」、「鳥取中」、「鳥取三井」と いった地名が現在も残っています。その起源は、古事記の「鳥取の河上宮」に遡ることができる由緒ある地名です。奈良時代の法隆寺の『伽藍縁起并 流記資材帳』や平安時代の『和名類聚抄』に現れる「和泉国日根郡鳥取郷」、鎌倉時代から戦国時代の「鳥取庄」などを経て、現在に続きます。 また、『和名類聚抄』には「河内国大県郡鳥取郷」という地名も現れます。残念ながら、こちらの「鳥取」は現在まで続いていませんが、古代の 寺院・集落跡があって「鳥取千軒」とも呼ばれてきた、柏原市青谷(あおたに)の周辺であろうといわれています。

<兵庫県>
南あわじ市福良丙(ふくらへい)に「鳥取」という小字があります。うずしおで有名な鳴門海峡に架かる大鳴門橋(神戸淡路鳴門自動車道) の近くで、「鳥取海岸」もあります。「鳥取」という地名の由来は不明ですが、近世まで遡ることができるようです。

<鳥取県>
鳥取県名の起源として、「鳥取」という地名が古代史料で最初に現れるのは、『和名類聚抄』の「因幡国邑美郡鳥取郷」です。 その後、中世末期の『信長公記』の中に「鳥取河」(現在の袋川)が見られるほか、地名としては、戦国期の「鳥取」、近世の城下町「鳥取町」、 現在の「鳥取市」と続きます。また、明治2年の版籍奉還により「鳥取藩」、同4年の廃藩置県により「鳥取県」という「公式」の名称が誕生しました。

<岡山県>
『和名類聚抄』に、「備前国赤坂郡鳥取郷」として現れます。鎌倉時代から戦国時代の「鳥取庄」を経て、「鳥取上村」、「鳥取中村」、 「鳥取下村」という地名も存在しましたが、明治や昭和の市町村大合併の際に消滅しました。現在の赤磐市内に当たります。

<愛媛県>
今治市上浦町(かみうらちょう)に「鳥取岬」という岬があります。しまなみ海道(西瀬戸自動車道)の多々羅大橋(橋長1480メートル で世界最長の斜張橋)から10キロメートル足らずの場所にあって、無人の離島を除くと愛媛県の最北端に当たります。

<熊本県>
『和名類聚抄』に、「肥後国合志郡鳥取郷」として現れます。残念ながら、所在地が具体的にどの辺りであったかは不明のようです。

<佐賀県>
平安時代の『筑前国観世音寺資材帳』に、「三根郡(中略)鳥取里」として現われます。現在のみやき町内に当たりますが、詳細は不明のようで す。
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