鳥取地名の由来(その4)

今回からは、「鳥取」という名の源流を訪ねて、古代の文献をあたっていきます。
鳥取県の由来となる「鳥取郷」という地名が初めて文献に現れるのが、和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)という平安時代に作られた辞書だ ということは、よく知られていますね。

この辞書は930年頃に作られたといわれていますが、オリジナルは現存せず、多くの写本が今に伝えられています。十巻本と二十巻本の2つの 系統が伝わっており、このうち二十巻本のほうに当時の国・郡・郷(古代の行政区画)が網羅されていて、古い地名を調べるのに貴重な資料となっ ているそうです。

さて、実際に二十巻本のひとつ、高山寺本の国郡部を見てみると、古代の因幡国には巨濃(この)郡・法美(ほうみ)郡・八上(やかみ)郡・智 頭(ちづ)郡・邑美(おうみ)郡・高草(たかくさ)郡、気多(けた)郡の7つの郡が記されています。そして、このうち邑美郡に、美和・古市・ 品治・「鳥取」・邑美という郷名が出てきます。

幸いなことに、これら5つのうち4つの地名は現在も残っていますので、千代川沿いに久松山から袋川あたりが鳥取郷、袋川から鳥取駅あたりが品 治郷、駅南のあたりが古市郷、さらにその南が美和郷だったのだろうと想像できます。千年以上も前の地図が容易に頭に描けるというのは、すごい ことですね。

ところで和名類聚抄では、鳥取郷は因幡国だけでなく、河内国(現在の大阪府)・和泉国(大阪府)・越中国(富山県)・丹後国(京都府)・備 前国(岡山県)・肥後国(熊本県)にも出てきます。このように各地に広く分布しているのは、鳥取郷という名が、その地に住んでいたであろう鳥 取部という部民(豪族などに服属していた職業集団)に由来するからだといわれています。

部民名が地名となる例は多いようで、例えば因幡国の郷名の中でも、服部・品治・委文・刑部・日置・勝部・丹比・私都・土師・日下部などは部 民制の名残を示すものだろう、という指摘もあるそうです(鳥取県史)。

ということで、鳥取県の地名の起源は、「鳥取部」にありそうです。そこで次回は、その「鳥取部」の由来を古事記や日本書紀の世界に訪ねてみ   たいと思います。

なお、「鳥取」を含む地名は、先ほど紹介した鳥取郷を含め全国にたくさんありますが、みなさんはどれくらいご存知でしょうか?今回私が調べ た範囲では、古代から現代にかけて、北海道・福島県・群馬県・千葉県・富山県・愛知県・三重県・京都府・大阪府・兵庫県・鳥取県・岡山県・愛 媛県・熊本県・佐賀県に、「鳥取」を含む地名がある(あった)ことが分かりました。なんと、全都道府県の約3分の1にあたる数です。これら全 国にある鳥取も、このシリーズの最後にご紹介したいと思います。

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